SECTION 01
農業の持続的発展のための施策 ― 担い手への農地集積
新たな食料・農業・農村基本計画(2020年3月)は、「望ましい農業構造の姿(2030年)」を掲げ、担い手への農地集積を進める方向を示している。
望ましい農業構造の姿(2030年)
効率的かつ安定的な農業経営(主たる従事者が他産業従事者と同等の年間労働時間で地域における他産業従事者とそん色ない水準の生涯所得を確保し得る経営)になっている経営体及びそれを目指している経営体の両者を併せて「担い手」とする。
農地の担い手への集積率
約6割
→
8割
現状の約6割から、8割への引き上げを目指す。
「担い手」に含まれる経営体
Type 01
認定農業者
市町村の基本構想に照らして農業経営改善計画が認定された農業経営者。
Type 02
認定新規就農者
将来、認定農業者となると見込まれる新規就農者。
Type 03
集落営農
将来、法人化して認定農業者となることも見込まれる集落営農。
原典では認定農業者・認定新規就農者・集落営農の3区分を「担い手」として位置づけている。各区分の細かな要件は本講義スライドには記載がないため、ここでは原典の記述範囲にとどめる。
出典:講義8 スライド p2〜3「1.農業の持続的発展のための施策」「望ましい農業構造の姿(2030年)」/新たな食料・農業・農村基本計画(2020年3月)
SECTION 03
就業までの農業との関わり ― 食農教育と就農意識の形成
就農に至る手前の段階では、農業・農村との関わりそのものが減少している。その背景と教育的効果を押さえたうえで、小中学生への意識調査から就農意識が形成されるプロセスを読み解く。
背景
- ▶農業後継者の減少
- ▶食生活の乱れ・食に起因する健康問題
- ▶「食料消費の場」と「農業生産の場」の距離が拡大
- ▶農業・農村の役割を認識・理解する機会が減少
農業・農村の教育的効果
農業の教育的効果
- ◆人間は自然生態系の中で生存していることを知る。
- ◆人間の連帯と秩序の必要性を知る。
- ◆「失敗」の体験と対処法を身に付ける。
農村の教育的効果
- ◆人間と人間の「結び付き」の重要さを知る。
- ◆伝統文化に触れ、人間的な感性を回復する。
出典:講義8 スライド p9「3.就業までの農業との関わり」。なお p5〜8 は本文に対応する図版(画像)で、本文テキストとしては抽出できないため割愛している。
実態調査
就農意識に関するアンケート調査
調査目的
農業・食・地域に関する意識を調査し、「農業に向かう意識を形成する要因」を明らかにする。
就農意識の全体・学年別・農家非農家別の集計グラフ(「就農したい/就農したくない/わからない」)は原典 p10 のグラフを参照。本テキストからは数値を抽出できないため、ここでは概要のみ示す。
就農したい理由(「就農意識あり」の回答者・全体 %)
| 理由 | 全体(%) |
| 自然の中で仕事ができる | 49.0 |
| 植物や動物が好き | 45.1 |
| 食べ物を作りたい | 43.6 |
| 家族で仕事ができる | 38.2 |
| 親が農業をやっている | 36.3 |
| 自然豊かな農村に住める | 33.3 |
| 家のそばでできる | 33.3 |
| からだを動かすのが好き | 29.9 |
| お金がもうかりそう | 15.2 |
| サラリーマンになりたくない | 14.7 |
| 休みが自由そう | 13.2 |
| 農業は簡単そう | 6.4 |
| その他 | 6.4 |
原典 p11 では「男女別/農家・非農家別/学年別(小4〜中3)」の内訳も併記されている。ここでは確実に読み取れる全体(%)のみを掲載。属性別の詳細は原典を参照。
就農したくない理由(「就農意識なし」の回答者・全体 %)
| 理由 | 全体(%) |
| 他にやりたい仕事がある | 83.2 |
| 農業は難しそう | 26.6 |
| お金がもうかりそうにない | 14.5 |
| 農薬を使いたくない | 14.5 |
| 農業はよごれる | 12.5 |
| 農村には住みたくない | 11.1 |
| 親を見ていて大変そう | 8.0 |
| からだを動かす仕事がいい | 5.8 |
| 親と一緒に仕事がしたくない | 3.0 |
| その他 | 3.8 |
原典 p12 でも属性別(男女・農家非農家・学年別)の内訳が示されている。ここでは全体(%)のみ掲載。「他にやりたい仕事がある」が突出して高い(83.2%)点が特徴。
就農意識形成に関する3つの仮説
Hypothesis 1
就農意識の形成には、「農作業に参加したいという意識」と「地域に住み続けたいという意識」が必要。
Hypothesis 2
「農作業に参加したいという意識」の形成には、「農業への関心」と「食への関心」が必要。
Hypothesis 3
「地域に住み続けたいという意識」の形成には、「地域の魅力を評価する意識」が必要。
就農意識形成のプロセスを図示した模式図は原典 p14に掲載(画像のためテキスト化不可)。上記3仮説の関係を構造化したものと対応する。
就農意識の形成には、食と農への意識、地域への意識が重要。
就農者のみならず、地域農業の理解者を育てる点でも有効。
実際の就農に至るまでには、長いプロセスや、様々な形態がある。
食農教育について、プログラムの開発・体制作りが必要。
出典:講義8 スライド p10〜15「就農意識について」「就農したい理由/したくない理由」「仮説1〜3」「就農意識形成のプロセス」およびまとめ。
SECTION 04
法人の農業参入 ― リース方式の解禁と食品事業者の参入
2009年の農地法改正でリース方式による参入が全面解禁され、農地を借りて農業経営を行うリース法人が急増した。さらに食品関係事業者の農業参入も進んでいる。
リース法人数(2023年1月現在)
4,121
農地を利用して農業経営を行うリース法人の数。
2009年 農地法改正
リース方式による参入を全面解禁。
1年当たりの平均参入法人数は、改正前の約5倍のペースで増加している。
リース法人数の推移(原典 p17)、リース法人の農業参入の動向(p18〜19)、農地所有適格法人の農業参入の動向(p20)はいずれもグラフ画像で、テキストとしては抽出できない。数値の詳細は原典を参照。
リース法人が農地を借りて農業をする方法
企業や法人などのリース法人が、農地を借りて農業をする方法は2つ。
Method 01
農業委員会の許可
農業委員会の許可を受ける方法。
Method 02
促進計画による方法
農地中間管理機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」による方法。
原典 p22〜24 は本節に対応する図版(画像)で、本文テキストは含まれない。
農業経営発展計画制度
農地所有適格法人が、出資により食品事業者等との連携を通じて農業経営を発展させるための計画(農業経営発展計画)について、農林水産大臣の認定を受けた場合に、議決権要件の特例を措置する。
実態調査
食品関係事業者の農業参入の現状
食品関係事業者の農業参入の現状・状況(業種別/詳細業種別)、参入意向企業、参入先の営農類型などが調査されている。
該当データ(原典 p26〜30)はグラフ画像で、数値はテキスト抽出できない。出典は日本政策金融公庫「食品産業動向調査」(2025年1月)。詳細は原典を参照。
営農類型の事例として食品製造業(原典 p31)・建設業(原典 p32)が図示されている。出典は日本政策金融公庫「企業の農業参入に関する調査」(2012年)。
Professor's Note
法人参入を理解する鍵は2009年の農地法改正にある。それ以前、企業がリース(借地)方式で農地を使うことは大きく制限されていたが、この改正で全面解禁された。結果として参入ペースは改正前の約5倍となり、2023年1月時点で4,121法人に達した。さらに近年は、農地所有適格法人が食品事業者等と出資を通じて連携する「農業経営発展計画制度」など、資本面での連携を後押しする制度も整えられている。
講義8 スライド p16〜32「4.法人の農業参入」「農業経営発展計画制度」「食品関係事業者の農業参入」
出典:講義8 スライド p16〜32。リース法人数・参入方法・農業経営発展計画制度の記述、および日本政策金融公庫「食品産業動向調査」(2025年1月)「企業の農業参入に関する調査」(2012年)。
SECTION 05
農業経営の継承 ― 有形資産と無形資産の引き継ぎ
農業経営の継承とは、農地や機械・設備等の有形資産とともに、技術・ノウハウ・人脈等の無形資産を次の世代に引き継いでいくこと。計画的に進めることが重要となる。
農業経営の継承とは
農業経営の継承:農地や機械・設備等の有形資産とともに、技術・ノウハウ・人脈等の無形資産を次の世代に引き継いでいくこと。円滑な経営継承を実現するために、経営者と後継者による話し合いを準備段階から実行段階まで様々なことを何度も行う必要があるため、時間を要することが多く、計画的に進めていくことが重要。
原典 p33 には「経営体別の後継者確保状況」(資料:2020年農業センサス)と「農業経営部門別に見た『5年以内に農業を引き継ぐ後継者を確保していない』経営体の割合」の2つの図が掲載されている。いずれもグラフ画像のため数値は抽出できない。詳細は原典を参照。
経営継承の類型
Type 01
① 親族内継承
親族への継承。現在の経営者の子息・子女が後継者となるケースの他、甥や娘婿が後継者となるケースもある。
メリット
- 関係者から心情的に受け入れられやすい。
- 後継者を早期に決定し、長期の準備期間が確保できる。
留意点
- 親族内に経営能力と意欲がある者がいるとは限らない。
- 相続人が複数いる場合、後継者の決定や事業用資産等の集中が難しい。
- 後継者本人の意向を明示的に確認する取組が必要。
Type 02
② 親族外継承(従業員等)
従業員等の非親族への継承。共同創業者、番頭格の役員、部門長等の従業員、優秀な若手従業員等が後継者候補となることが多い。経営者の子息等への中継ぎとして、一時的に行われることもある。
メリット
- 親族内に後継者候補がいない場合でも、後継者確保がしやすい。
- 業務に精通しているため、他の従業員などの理解が得られやすい。
Type 03
③ 親族外継承(第三者)
親族や従業員以外の者への継承。身近なところに後継者候補がいない場合などに検討され、マッチングによる外部人材の招へいや事業譲渡などがある。
メリット
- 広く後継者候補を求めることができる。
- 現経営者が事業売却による利益を獲得できる。
留意点
- 親族内継承と比べて、関係者から心情的に受け入れられにくい場合がある。
- 後継者として組織内で計画的に人材育成をしていく必要がある。
- 希望の条件(後継者の経営理念、従業員の継続雇用、売却価格等)を満たす後継者の確保が難しい。
- 後継者が確保できても、関係者の理解や協力などが得られず後継者が辞めてしまう場合もあるので、継承完了までしっかりと経営をサポートする必要がある。
農業経営の継承は農地の継承にとどまらない。技術・ノウハウ・人脈という無形資産をどう引き継ぐかが本質であり、親族内・親族外(従業員)・第三者のいずれの類型でも、準備段階から実行段階まで計画的に進めることが成否を分ける。
出典:講義8 スライド p33〜35「5.農業経営の継承」「経営継承の類型(①親族内継承/②親族外継承(従業員等)/③親族外継承(第三者))」。後継者確保状況の図は2020年農業センサスに基づく。